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遠方の裁判所への出頭が容易に!
2025-04-07
カテゴリ:Q&A
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遠方の裁判所への出頭が更に容易に!
Q
私は神戸に住んでいます。この度、東京に住む相手を訴えたいのですが、東京地裁でしか訴えることができないと聞きました。絶対に1度は東京地裁に行かないといけないのでしょうか。
A
民事訴訟のルール上、判決を言い渡すためには、「口頭弁論」という期日を踏まえなければなりません。口頭弁論というのは、公開の法廷で行われる手続のことで、従前は当事者の出頭を必要としていました。
被告には、陳述擬制という制度がありますが、原告側にはありません。ですので、コロナ渦以前においては、原告は、遠方の裁判所で裁判を提起する場合には、少なくとも第1回期日には、裁判所に出頭する必要がありました(双方代理人がついてるケースでは、2回目以降は弁論準備手続という手続に切り替えて電話会議で対応していましたが、それでも証人尋問の際や判決言渡前の期日は出頭する必要がありましたので、判決までには2、3回の出頭が必要でした)。
コロナ渦になり、密を避けるために、裁判所への出頭も、不要不急の場合を除き、避けるのが好ましいとなりました。そこで、事実上という形で、双方代理人が就いている事案では、当初から「書面による準備手続」という口頭弁論とは異なる手続で、ウエブ会議を行い、ウエブ会議で期日を重ねて、当事者の主張を行い、合意できれば、当事者のいずれかが出頭して、和解が成立するという形でした(後日の改正で、ウエブ会議でも和解ができるようになったため(民事訴訟法89条2項)、一方当事者の出頭は不要になりました)。
そのため、和解が成立すれば、遠方の他方当事者は出頭しなくてもよい可能性がありましたが、和解できない場合には、依然として、証人尋問及び弁論に出頭しなければいけませんでした。特に、第1回期日以前に、被告が裁判所に何らの連絡しない場合には、原告の出頭は必要とされていまいた。
このように遠方の裁判所に出頭しなければいけないというのは費用も時間もかかるものですので、訴訟提起を避ける一つの動機となっていました。
しかし、令和6年3月からは、ウエブ会議で「口頭弁論」に出頭することができるようになりました。その要件は、「当事者の意見を聴いた上で裁判所が相当と認めること」ですので、比較的緩やかに認められており、代理人が就いていなくとも、利用できるケースもあるかと思われます。
私は、一度だけ、控訴審の口頭弁論にウエブ会議で出頭したことがありますが、出頭を希望する当事者は、裁判所に事情を説明して、ウエブ会議に参加したい旨伝える必要があります。なお、裁判所では、TEAMSを利用しており、ZOOMなどは利用できないため、ご注意ください。
離婚訴訟などの人事訴訟でも、ウエブ会議で口頭弁論に出頭することが可能となっています。
今後は、証人尋問もウエブで行われるようになる予定です。実現すれば、費用等が理由で、遠方での裁判を躊躇する必要はなくなりますね。
弁護士 上田 貴 ueda@fujikake.lawyers-office.jp