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Q
銀行から、「お客様情報確認書」という書類が届きました。中身を確認すると、現在の住所等について情報更新する内容のようですが、記載するのは面倒なので、放置しておいてもよいですか。
A
上記「お客様情報確認書」は、マネー・ロンダリング対策の一環で送られたものです。
マネロンとは、一般的に資金洗浄と説明されますが、「犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、捜査機関による集積の発見や検挙を逃れようとする行為」をいいます。
マネロンを放置すれば、犯罪による収益が、将来の犯罪活動や犯罪組織の維持・強化に使用され、組織的な犯罪を助長するとともに、これが移転して事業活動に用いられることにより健全な経済活動に重大な悪影響を与えることから、マネロン対策を行う必要があります。
マネロン対策については、国際協調を図る政府間機関としてFATFが設立され、FATF加盟国は、定期的にマネロン対策の国際的基準の遵守状況を相互にチェックし合い、その履行状況が一定水準に達するまで改善を求める「FATF相互審査」が行われている。
日本でも令和元年にFATF相互審査が実施され、その結果が令和3年8月に公表されました。
審査結果では、マネロン・テロ資金供与対策をより強化するために、日本が取り組むべき事項がいくつか示されており、その中で、金融機関等が継続的な顧客情報の確認を実施することも求められています。これを受け、金融庁により、「マネロン・テロ資金ガイドライン」が改正され、同ガイドラインでも、顧客情報の「定期的な確認」を行うことが求められています。
そのため、金融機関は「お客様情報確認書」等の書面を郵送したり、銀行アプリの起動時に顧客情報の変更の有無等についての確認を行うなど、顧客情報の更新に向けた動きがなされています。
ところが、特に書面を郵送する方法に関しては、日本では一人あたりの口座保有数が多いこともあって、回収率が芳しくなく、回答していない人が多々います。
しかしながら、多くの金融機関では、次のような規定が定められていますので、これを放置すると、取引制限を受ける可能性もあります。
「当行は、預金者の情報および具体的な取引の内容等を適切に把握するため、預金者に対し、各種確認や資料の提出等を求めることがあります。この場合において、預金者が、当該依頼に対し正当な理由なく別途定める期日までに応じていただけないときは、入金、振込、 払戻し等の本規定にもとづく取引の全部または一部を制限することがあります。」
そのため、金融機関からの情報更新に関する照会を放置するのはリスクを伴うものといわざるを得ませんし、今後、顧客側に回答義務を課する内容の法律が制定することも検討され始めておりますので、回答は忘れずにしていただいた方がよいと思われます。