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給与のデジタル払いが解禁されます
2023-03-06
カテゴリ:Q&A
Q&A 2023年4月から、給与のデジタル払いが解禁されるということですが、どのような制度となるのでしょうか。

 労働基準法では、給与の支払いについて、「通貨で、直接労働者に、全額を」支払わねばならないと規定されています。これまでは、労働基準法施行規則で、労働者が同意した場合の支払方法の例外として、銀行振込が認められていました。法改正により、銀行振込に加えて、スマートフォンの決済アプリや電子マネーを利用した振込が可能となります。給料の一部をデジタル払いとし、残りはこれまで通り銀行振込と、支払方法を併用することも可能です。なお、デジタル払いの上限額は100万円となっています。
 2023年4月1日から、デジタル払い送金先としてサービス提供を希望する業者が厚生労働大臣に指定申請を行えます。厚生労働省の審査を経て、指定された業者(「指定資金移動業者」と定義されます)のみが、給与のデジタル払い送金先となることができます。デジタル払いが実施可能となるのは、指定資金移動業者が公表された後となりますので、もうしばらく先ということになります。
 デジタル払いを給与支払方法の選択肢に加えたい使用者は、労働者の過半数を代表する者(労働組合が存在する場合は、その組合)と、給与デジタル払いの対象となる労働者の範囲や取扱指定資金移動業者の範囲等を記載した労使協定を締結する必要があります。そして、労働者に制度内容や留意事項の説明を実施し、その説明を受けた上でデジタル払いを希望する労働者より、デジタル払いでの支払を希望する額、送金先とする指定資金移動業者のアカウントや口座等の情報を記載した同意書の提出を受ける必要があります。
 社会のキャッシュレス化が急速に進み、日常生活では現金支払の機会が減っている人もいます。労働者としては、直接、利用する決済アプリのアカウントに給与が振り込まれることで、銀行口座からチャージする手間が省けるというメリットがあります。
 使用者側としては、銀行口座を持っていない外国人労働者の雇用がしやすくなったり、給与振込にかかる手数料の削減に繋がることがメリットとして指摘されています。しかし、デジタル払いと銀行振込の併用を労働者が希望する場合は、振込手数料は二重に発生しますし、指定資金移動業者が破綻した場合に備えて、労働者にデジタル払いの同意を得る際には銀行振込先も登録させることが予定されていますので、現時点では、上記のメリットはあまり顕在化しないように思います。今後、キャッシュレス化がより一層進み、外国人労働者の登用が盛んになるなど、時代の流れに応じて、給与のデジタル払いが可能である体制を整えておくことが、より優秀な人材を確保する一手段になり得るかもしれません。

弁護士 浦本真希  uramoto@fujikake.lawyers-office.jp

神戸湊川法律事務所
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