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防犯カメラの設置と肖像権の保護
2023-06-05
カテゴリ:Q&A

Q 

 私は、コンビニを経営していますが、窃盗や強盗等の犯罪の防止や証拠保全の目的で、店内各所に防犯カメラを設置して、入店した全ての客の行動を撮影・録画しています。最近、店内で中学生同士のつかみ合いの喧嘩が発生し、双方とも軽いケガをしたようですが、すぐに収って2人一緒に帰って行きました。

 その翌日、喧嘩の当事者の一方の父親が当店を訪ねてきて、「民事の損害賠償請求をするので、防犯カメラの動画データを提供してほしい」と申入れてきました。提供してもよいでしょうか。

 

A 

1 防犯カメラの設置及び撮影・録画の違法性

 コンビニ店内での防犯カメラの設置及び撮影・録画の違法性が問題となった裁判例(名古屋地方裁判所平成14年7月16日判決)は、商店において買物をする個人が、商品の選択、店内における行動について、他人に知られるのを欲しないことは認められるべきであり、商店内において承諾なしに撮影されることは、肖像権の侵害にとどまらず、プライバシー権の侵害でもあるとしています。

 一方で、裁判所は、「個人の有する肖像権等も一定の場合には制限される」として、防犯カメラの設置等の措置についてコンビニ経営者の広い裁量権を認め、店内における防犯カメラの設置及び撮影・録画が許されるかどうかは、その目的の相当性、必要性等を考慮して違法性があるかどうかを検討する必要があると判断しました。その上で、コンビニにおける万引等の増加などに言及し、店内における防犯カメラの設置及び撮影・録画の目的は、万引等の犯罪に対処するためであるから、その目的は相当であり、必要性も認められるから違法ではないと判断しました。

 

2 録画データ提供の可否

  前記裁判例は、コンビニが防犯カメラを設置し、撮影・録画することにしたのは、コンビニにおいて発生する可能性のある犯罪及び事故に対処する目的であるとした上で、その目的を逸脱して録画データを利用することは違法となるが、コンビニに関係のある犯罪捜査に協力するために録画データを警察に提供することは、違法ではないと判断しました。

 ご相談のケースは、中学生同士の喧嘩に関する民事紛争の証拠とする目的での録画データの利用ですので、コンビニ自体が犯罪及び事故に対処する目的からは逸脱すると思われるので安易に提供することはできないと思います。

 もっとも、この喧嘩が民事裁判になって、裁判所から提出要請がある場合には、その要請に応じて当該録画データを裁判所に提出することは、違法性が阻却されるので問題はないと思われます。  


3 個人情報保護法との関係

  防犯カメラで撮影・録画した映像が特定の個人を識別できるものであれば、個人情報で規定される「個人情報」に該当します。

「個人情報」は、法令に従って適正に管理する必要があり、それを怠ると、プライバシー権の侵害となるおそれがあります。

個人情報保護委員会は「個人情報の保護に関する法律についてのガイドラインに関するQ&A」https://www.ppc.go.jp/files/pdf/2205_APPI_QA.pdfにおいて、防犯カメラの設置に関わる個人情報の取扱いについて、個人情報の利用目的をできる限り特定し、その利用目的をあらかじめ公表・通知することが必要であるとしています。もっとも、取得したカメラ画像を防犯目的のみに利用する場合には、利用目的の公表・通知は不要であるものの、防犯カメラが作動中であることを店舗等の入口や設置場所等において容易に認識可能とするための措置を講ずることが望ましいとしています。



弁護士 藤 掛 伸 之 fujikake@lawyers.jp
神戸湊川法律事務所
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