本文へ移動

よくある質問

記事一覧

エステ契約の落とし穴に注意!
2023-11-02
カテゴリ:Q&A
Q 
「通い放題・期間・回数無制限」という広告に惹かれ、脱毛サロンで30万円を支払い契約しました。
 3回通いましたが、痛みが強いのと、希望の予約がなかなかとれないことから、解約を申し入れたところ、既にサービスを受けた3回分の施術費は返却できず、中途解約に伴う違約金も発生するため、返金額は16万円になると言われました。
 3回の施術では効果もなく、30万円も払って半額近くサロンにとられるのは納得できません。

A 
 エステの中でも脱毛エステは、広告の勧誘表現から、価格的にも無理なく通えそうと、近年、男女問わず通う人が増え、結果、全国の消費生活センターへのトラブル報告も増えています。国民生活センターがまとめた2022年度の年齢別の相談件数で見ると、エステに関する相談は、20歳未満では第3位(1,382件)、20代では第1位(12,501件)と若年層の相談が多く見られます。
 広告では、安価や「通い放題」「期間・回数無制限」等、気軽にエステに通えそうだとの印象を持ちますが、いざ店舗で契約する段階となると、「より効果がある」「○万円払えば、永久脱毛ができる」等、より高額のコースを案内されたり、通い放題等聞いていたが予約がなかなか取れなかったり、自身の転居や店の閉鎖などで、通うことが難しくなったりすることもあります。また、1回の施術ごとの料金支払ではなく、コース制で前払いとなっていることがほとんどですから、中途解約となった場合の返金トラブル、エステ店が倒産した場合の返金トラブルも多く報告されています。

 エステ契約のように、ある程度の期間サービス提供が予定されており、かつ、①サービス提供を受ける者の身体美化や知識向上といった心身に関する目的を実現させるもの、②サービスの性質上、目的が実現できるか確証できないといった特徴をもつサービス契約のうち、これまでトラブル報告が多く見られた7類型を、特定商取引法は「特定継続的役務提供」として、消費者保護規定を置いています。エステ契約の場合、サービス提供期間が1ヶ月を超え、支払金額が5万円を超えることが、特定商取引法の適用条件となります。

 特定継続的役務提供にあたるエステ契約では、業者は、契約前に「概要書面」、契約締結時に「契約書面」という2種類の書面を交付する義務を負います。これら書面には、業者の連絡先などの情報、役務の提供期間や、役務の対価、その支払時期・方法、クーリングオフに関する事項、中途解約時の精算金額など法定事項を記載する必要があります。
 クーリングオフは、「契約書面」を受領から8日間であれば可能です。この点、契約前の概要書面しか交付していない場合は、契約書面を受領していないとして、クーリングオフの期間は進行せず、いつでもクーリングオフは可能ということになります。
 また、特定継続的役務提供の場合、中途解約の際の解約違約金も上限が定められています。エステ契約の場合は、サービス提供前の場合は2万円が上限です。サービス提供後の場合は、①提供されたサービスの対価に相当する額と、②2万円または契約残額の10%のいずれか低い額の合計額が上限です。

 ここで問題となるのが、「通い放題」「回数無制限」等のコースでは、「有償で受けられる期間・回数」と「無償で受けられる期間・回数」に多くの場合分けられています。
 例えば「10回分1回あたり3万円」「11回以降は無償」というような料金体系です。より悪質になると、「3回まで1回あたり4万円」「5~8回まで1回あたり3万円」・・・と期間の初めの金額を高額設定しているケースもあります。質問の例が、この「3回まで1回あたり4万円」という契約だった場合、中途解約の違約金を計算すると、①施術済み分が3回×4万+②契約残額の10%が(30万-①の12万)×10%で、合計13万8000円の違約金という計算になるのです。このように、有償契約の期間が短かったり、単価が高額だと、消費者の予想以上の中途解約違約金がかかってしまいます。
 また、「11回目以降は無償」という契約内容で10回以上受けた後に中途解約を申し入れても、「有償のサービスは全て提供済みなので、返金は0円である」と言われてしまうことになります。

 1回あたりの施術内容に照らして明らかに高額な1回単価となっている場合、解約時の違約金を高額化する目的での価格設定であるとして、契約内容の不当性を争う余地もあると思われます。
 しかし、特定継続的役務提供の場合、このような施術の単価や回数は、契約書面に記載する必要があります。中途解約時の計算に関わるので、費目ごとの明細は、<たとえば「(1回あたりまたは1ヶ月あたりの単価)×(回数または期間)」という形で費目名、単価、数量等の算出根拠を明らかにする>と特定商取引法の通達で明記されています。
 エステ契約を結ぶ際には、概要書面と契約書面の両方を交付する店か、書面にはサービス内容がきちんと書かれているかをきちんと確認し、どういった契約になるのかを自身で把握することが大切です。

弁護士 浦本真希  uramoto@fujikake.lawyers-office.jp
神戸湊川法律事務所
〒650-0015
兵庫県神戸市中央区
多聞通3-3-9 神戸楠公前ビル3階

TEL.078-341-3684

TOPへ戻る