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競落した物件を占有者から引渡しを受ける方法
2023-12-05
カテゴリ:Q&A

競売で土地建物を落札しましたが、物件には債務者以外の者が物件を占有しています。
落札後、占有者に退去していただきたいのですが、何かよい方法はありますか。


競売で落札した物件に占有者がいる場合、「不動産引渡命令」(民事執行法83条)というものを利用することができます。

不動産引渡命令とは、競売で取得した不動産に人が住んでいたり、家具などの動産が置いてあったりした場合、買受人の申立に基づき、裁判所が相手方に対して不動産を引き渡すように命令を出す手続です。

競売手続では、買受人は、定められた期限までに代金を納付することにより、競売物件である不動産の所有権を取得し、所有権移転登記がなされます。
しかしながら、元の所有者(債務者)など、競売物件を占有している者が物件を引き渡してくれないと、買受人は実際に物件を利用することができません。債務者が任意に引き渡してくれない場合、自力救済禁止原則のもと、本来、訴訟をして、判決書を債務名義として強制執行手続を行う必要がありますが、それでは、物件を買い受けたいという人が競売手続での参加を躊躇してしまうおそれがあります。

そこで、不動産の競売手続を適正・迅速に遂行するために、買受人に対し、特別に競売手続の中で簡易・迅速に明渡の債務名義を取得できる手続が用意され、それが引渡命令です。代金納付した日から6ヶ月以内に、競売物件を管轄している裁判所に申立てを行い、申立てに特に問題がない場合、3~4日で不動産引渡命令の決定が出ます。

相手方は「債務者(元所有者)」又は「不動産の占有者で対抗力のある占有権原がない者」に限られます(民事執行法83条1項)。ですので、元所有者以外の者に対して、不動産引渡命令を行う場合には、対抗力のある占有権原に基づくか占有かどうかを検討する必要があり、場合によっては弁護士に相談した方がよいケースもあります。

引渡命令を受け取った相手方は、その書面を受け取った日から1週間は不服申立てをすることができ、その期間内に不服申立てがなかった場合は引渡命令が確定します。
引渡命令が出ても相手方から引渡しがなされない場合は、強制的に引渡しを実現するために、目的不動産の所在地を管轄する執行官に対して強制執行の申立てを行うことになります。

引渡命令は便利な制度ですが、申立ての相手方や申立てができる期間は限定されていますので、買受後に引渡命令が利用できそうかどうかは、物件明細書を精査する等して、入札をする段階できちんと検討しておくのがベターです。

弁護士 上田 貴 ueda@fujikake.lawyers-office.jp






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