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養育費不払に対する強制執行は強力
2024-02-05
カテゴリ:Q&A

Q 
 離婚後、別の女性と再婚することになり、何かと物入りなので、離婚した元妻との間で、元妻が親権者となっている長男の養育費の減額交渉をしていましたが、元妻が減額に全く応じないので、腹が立って2~3か月間養育費の支払をストップしたところ、勤務先の給与が差押えられました。養育費の減額交渉がうまくいかないからといって養育費の支払を止めた私が悪いのですが、勤務先との関係でも格好が悪いので、未払分を全額支払いました。それにもかかわらず給与の差押えは継続しています。
 どうすれば、給与の差押えは解除されるのでしょうか。

A 
1 養育費不払の場合の強制執行の強化
  令和2年4月1日から施行された改正民事執行法により、養育費不払の場合に対する強制執行が強化されています。
①給与の差押えは、原則は給与手取月額の4分の1までであるところ、養育費の不払の場合には、2分の1まで可能です。
また、②養育費の取決めをした時から転職等によって勤務先が変更になった場合でも、裁判所を通じて市区町村や年金事務所に変更後の勤務先を照会することができるようになったので、以前のように転職による養育費の不払を逃げ得とすることができなくなりました。
 さらに、③未払の養育費分だけでなく将来分まで差押の効力が及ぶので、養育費の終期まで勤務先から支払われます。つまり、養育費を一旦滞納して給与が差押えられると、未払分だけでなく、将来の養育費についてまで差押えの効力が及ぶので、強制執行や任意弁済によって未払分が完済となったとしても差押えは解除とはならず、原則として毎月の手取給与の半額が勤務先から親権者に対して直接支払われ続けることになるのです。


2 養育費不払を原因とする給与の差押えを解除する方法
 自らの不払が原因とは言え、給与所得者にとって勤務先の給与を差押えられた状態が長く継続するということは、勤務先にとって支払先が複数になるなどの事務手続上の迷惑をかけるだけでなく、給与の差押えが会社に知れるところとなって、職場環境にとって決して望ましい状況とは言えません。
 では、どのようにすれば、給与の差押え状態から脱することができるかですが、先ほども述べたとおり、未払分を全額支払ったとしても、それだけでは差押えを解除することができず、率直に申上げると、養育費の債権者(本件で言えば元妻)の協力(強制執行申立の取下げ)がなければ差押えを解除することはできないと言わざるを得ません。
 本件の場合には、元妻との養育減額交渉のもつれから不払をしたとのことですので、元妻の姿勢も強行であることが予想され、元妻が納得できる相当な条件を提示して申立を取下げてもらうしかないと思います。
 例えば、養育費の減額要求は一旦棚上げにして、養育費の未払分はもちろんのこと、いまだ支払期が到来してない将来分も相当程度一括前払いすることなどを提案して養育費支払に対する誠意をみせる努力が求められると思います。


弁護士 藤 掛 伸 之 fujikake@lawyers.jp

 


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