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共有物が管理しやすくなる!?
2022-04-05
Q.私は、現在、過去に相続した古い建物を多数の相続人と共有しています。ところが、共有者の中に、ほとんど交流のない遠縁の親族がいて、その建物の管理についての連絡もなかなか取れず困っています。令和5年に、共有に関する法律が改正されると聞きました。
この改正で共有のルールはどのように変わるのでしょうか。



A.相続において遺産分割協議がなされなかったケースなど、土地や建物といった不動産が複数人の共有状態となってしまうことは少なくありません。
令和4年現在施行されている民法のルールでは、こういった共有物の変更、管理行為について、共有者全員の同意や、持分価格過半数による決定を求めるなど厳格なルールを定めています。
そのため、相続人が多数に渡る場合や、所在不明の相続人がいる場合には、同意を取り付けることが困難となり、土地建物の適切な管理が阻害されてしまうことが問題されていました。

こうした問題に対処するため、令和5年4月1日から、共有に関する新たなルールが施行されることとなりました。

  1. 共有物の「管理」の拡大
    令和4年現在の法律では、共有物の変更については共有者全員の同意が必要となっています。そのため、たとえば砂利道をアスファルト舗装にする、建物の外壁の防水等の修繕工事といったものも「変更」にあたるとして、全員の同意が必要とされ、朽廃しかけた家屋が手をつけられないまま放置されるといった問題を生じさせていました。

    今回の改正では、「共有物に変更を加える行為であっても、形状又は効用の著しい変更を伴わないものについては、持分の価格の過半数で決定することができる。」(新民法251条1項、252条1項)という規定が設けられ、上記のようないわゆる軽微な変更については全員の同意がなくとも、持分価格の過半数の決定でできることになりました。

  2. 共有物を使用する共有者がいる場合のルール
    現行法では、共有者は共有物の全てを使用することができますが、共有物を使用している共有者がいる場合に、その使用者の同意がなくでも、持分価格の過半数で共有物の管理について決定できるかは明確ではありませんでした。
    今回の改正で、共有物を使用する共有者がいても、持分の過半数で管理に関する事項を決定することができると明文化されます(新民法252条1項)。

    また、共有物を使用する共有者については、他の共有者に対して、自己の持分を超える使用について、対価を支払う義務を負うことも明確化されます。例えば、共有物の建物に3分の1の持分を有する共有者が居住している場合、他の共有者に3分の2の割合の使用料を支払う義務があることになります(無償とする合意をすることは可能です)。

  3. 賛否を明らかにしない共有者がいる場合のルール
    現行法では、共有物の管理、変更について他の共有者との決定や同意が必要となりますが、共有者の中には連絡がつかず、賛否の意見を得ることが困難な場合もあり、共有物の管理が行き詰まってしまう問題が生じていました。

    そこで、改正法では、賛否を明らかにしない共有者がいる場合、裁判所の決定を得て、その共有者を除いた共有者の過半数で決定をすることができるようになります(新民法252条2項2号)。

    また、共有者の所在が不明で連絡を取ることができない場合にも同様のルールが定められています(新民法252条1項)。

  4. まとめ
    令和5年の改正では、今回挙げた以外にも、共有物の管理者の選任の規定、共有物分割方法の明文化などの改正もあります。今回の改正により劇的に共有物の管理がしやすくなったということではないようですが、昨今社会問題となりつつある空き家問題等の解消の糸口としての効果は期待できるのではないかと思われます。

弁護士 藤掛 昂平 ko.fujikake@gmail.com
神戸湊川法律事務所
〒650-0015
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TEL.078-341-3684

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