記事一覧
会社代表者等のプライバシー保護
2024-12-04
カテゴリ:Q&A
NEW
会社代表者等のプライバシー保護
Q
この度、私は、起業して、株式会社の代表取締役に就任する予定ですが、登記で私自身の住所を表示しないといけないと知らされました。
登記で自宅住所が公開されるのは躊躇されるので、何か良い方法はないでしょうか。
A
現行の商業登記規則では、株式会社の登記事項証明書において、代表取締役等の住所を番地まで全て記載するものとされています。
株式会社の登記事項証明書は、手数料を払えば取得できますので、取得しようと思えば、誰でも、株式会社の代表取締役の自宅住所の情報を取得できてしまいます。しかも、最近は、ネットでも簡単に取り寄せることができます。
しかし、やはり自宅住所の情報を公にさらすのは誰でも抵抗がありますし、昨今の闇バイトの横行やストーカー被害の存在などを見ても、防犯上の問題もありそうです。こうしたことから、住所を公開することへの抵抗感から起業を躊躇する例もあると指摘もありました。
そこで、プライバシー保護を図って、誰もが安心して起業することができるよう、株式商業登記規則等の改正により、代表取締役等の住所の一部を非表示とすることを選択できるようにする「代表取締役等住所非表示措置」が設けられました。
株式会社の代表取締役の他、代表執行役・代表清算人も、代表取締役等住所非表示措置を申し出ることができますが、合同会社、医療法人、NPO法人、一般社団法人などは対象外となっております。
なお、官公署等から請求があった場合は、住所の情報が提供されますし、利害関係人は住所の記載された書面を閲覧することができるとされています。
代表取締役等住所非表示措置を利用する要件は次の2つです。
要件1 登記の申請と同時に申し出ること
(但し、代表取締役等の住所が登記すべき事項に含まれる登記の申請に限る)
要件2 次のア~ウの書面を添付すること(上場会社については必要な書面を簡略化)
ア 株式会社が実在することを証する書面(会社を受取人とする配達証明書等)
イ 代表取締役等の住所等を証する書面(印鑑証明書、住民票等)
ウ 株式会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書面
(定款認証に当たって申告した実質的支配者の本人特定事項についての申告受理及び認証証明書)
あくまで、プライバシー保護を図って、安心して起業できるようにする趣旨の制度ですので、要件1との関係で、すでに登記されている住所を非公開にすることはできません。
ただし、代表取締役が住所変更を行い、住所移転による変更の登記を行う際には、代表取締役等住所非表示措置を利用することができますので、すでに登記されている代表取締役が、どうしても住所を非公開としたい場合には、引っ越しをする必要があります。
以上のように、「代表取締役等住所非表示措置」が新設され、今までよりも、起業のハードルが下がったと思いますので、上記制度の利用をご検討ください。
ただし、金融機関から融資を受ける際に不都合が生じたり、不動産取引の際に必要書類が増えるなど、一定の支障が生じる可能性があるというデメリットも指摘されていますので、それらの点を踏まえて、ご検討ください。
弁護士 上田 貴 ueda@fujikake.lawyers-office.jp