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企業のカスハラ対策が義務化されます!
2025-09-19
カテゴリ:Q&A
Q 今年から企業が、従業員に対するカスハラに対してその対策の措置を実施することが義務づけられると耳にしました。実際に企業として実施しなければならない措置というのはどういうものなのでしょうか?
A
2025年6月に成立・公布された「労働施策総合推進法等の一部改正法」により、企業に対してカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)防止措置の実施が法律上の義務となることが決まりました。これまで努力義務にとどまっていたカスハラ対策が、すべての企業にとって不可避の責務となる大きな転換点です。
○なぜ法制化に至ったのか?
サービス業・小売業を中心に、顧客や取引先からの暴言・不当要求・威圧的言動などによるカスタマーハラスメント、いわゆるカスハラ被害が社会問題となっています。
これまでは、企業に対して「望ましい取り組み」が指針レベルで示されるにとどまり、法的な強制力はありませんでした。しかし、実効性のある対応を求める声が強まり、ついに2025年の法改正で、すべての事業主に防止措置の義務が課されることになりました。
○改正法の概要と施行スケジュールは?
今回の改正は、労働施策総合推進法の第33条等に新たな条文を追加する形で行われました。主なポイントは以下のとおりです。
- カスハラ防止措置の義務化(第33条第1項)
顧客・取引先等による言動で、社会通念上許容される範囲を超えて労働者の就業環境を害するものに対し、企業は「雇用管理上の必要な措置」を講じる義務を負います。 - 通報者・相談者の保護規定(第33条第2項)
被害を申告した労働者に対する解雇・降格等の不利益取扱いは禁止されます。 - 他の事業主との連携努力義務(第33条第3項)
関係する他社と連携し、協力して対応するよう努める義務が定められています。
なお、施行日は公布日(2025年6月11日)から起算して1年6か月以内とされており、現時点では2026年10月頃までに施行される見通しです
○企業がとるべき具体的対応とは?
厚労省が定めたカスハラ対策マニュアルでは以下のものが、企業が実施するべき措置として記載されています。
- カスハラに対する企業方針の明確化と周知
- 就業規則等に「カスハラ行為は許容しない」旨を明記
- 朝礼や研修で継続的に従業員に周知
- 相談窓口の設置と対応体制の整備
- 社内または外部委託による相談窓口の明確化
- 対応マニュアル・エスカレーションルールの整備
- 研修・教育の実施
- 管理職・現場従業員向けに対応方法を含む研修を実施
- ロールプレイングや事例解説など実践的な内容が望ましい
- 事実関係の正確な把握
- 事実確認、従業員保護、必要に応じて加害者への対応(注意・退店・通報等)
- カスハラに該当するか否かを、顧客・従業員等からの聞き取りや証拠に基づいて適切に確認する
- 再発防止措置
- 同様の問題が再発することを防止するため、定期的な取り組みの見直しや原因分析を行い、業務フローや対応手順の見直しを検討
○最後に:法改正を機に企業としての姿勢を明確に
「お客様は神様」という時代は終わりつつあります。従業員の心身の安全を守ることは、企業の持続的成長の基盤です。今回の法改正は、その姿勢を明確に社会に示す絶好の機会といえるでしょう。
施行までには1年以上の猶予がありますが、体制整備や社内文化の見直しには時間がかかるものです。今から一歩ずつ準備を進め、安心して働ける職場環境づくりに取り組んでいくことが、企業の信頼と競争力につながります。
カスハラ対策の社内でのルール作り等についてお困りの場合は、弊所までご相談ください。
弁護士 藤掛昂平
