本文へ移動

よくあるご相談

記事一覧

遺産の株式の配当金は誰のもの?
2026-02-05
カテゴリ:Q&A
NEW
Q 
 2年前の1月に父が死亡し、私と兄が父を相続しました。
父は、多数の不動産の他、多額の株式を所有していて、兄との遺産分割協議は長引き、相続開始から2年以上が経過した現在でも、遺産分割協議は成立していません。
 父が死亡した後、父が保有していた株式には500万円以上の配当金が発生しており、証券会社の預りとなっています。
 遺産分割協議は、まだまだ長引きそうですので、配当金だけでも先に確保しておきたいのですが、父の死亡後に発生した配当金のうち、私の法定相続分2分の1を証券会社に請求することはできるでしょうか。

A 
1 相続開始後の遺産から発生する果実の帰属
 2023年10月のQ&Aで、「遺産のアパートの賃料は誰のもの?」と題して、相続開始後に遺産の不動産から発生した賃料は、誰に帰属することになるのかという問題について説明をしました。
 今回のQ&Aは、同様の問題を、今度は株式配当金の帰属について説明するものです。

2 賃料の場合
  平成17年9月8日の最高裁判決は、相続開始後に発生した賃料の帰属につき、次のように判断しました。
  相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、その帰属は、後になされた遺産分割の影響を受けない。
つまり、相続開始後に遺産である不動産から発生した賃料は、遺産分割の対象とはならず、各相続人が法定相続分に応じて確定的に取得することになるので、遺産分割協議の成立を待たずに、賃借人に対して各自、その相続分に応じて請求することができることになるのです。

3 株式配当金の場合
  それでは相続開始後に、遺産である株式から発生した配当金についてはどうでしょうか。もし、配当金が賃料と同じ取扱いになるとすれば、今回の相談者に対する回答は、遺産分割協議成立前でも、その法定相続分に応じて配当金の請求ができるということになりますが、はたしてどうでしょうか。
 (1) 平成26年12月12日の最高裁判決
   平成26年12月12日の最高裁判決は、株式ではなく、投資信託について、相続開始後に発生した投資信託の収益分配金が遺産分割の対象となるかどうかが争われた事件につき、投資信託の収益分配金は、投資信託受益権の内容を構成するものであるから、当然に相続分に応じて分割されることはないと判断しました。
    つまり、投資信託の収益分配金は、不動産の賃料とは異なり、遺産分割の対象となり、各相続人が相続分に基づいて請求することはできないと判断したのです。
 (2) 令和7年3月14日大阪地裁判決
    最高裁判所の判例として、相続開始後の賃料は当然に各相続人に帰属するとされる一方、相続開始後の投資信託の収益分配金ついては遺産分割の対象であり、各相続人に当然帰属するものではないという正反対の判断が存在する中で、相続開始後の株式配当金の取扱いが注目されていたところ、地裁判例ではありますが、令和7年3月14日大阪地裁判決が、この点について判断しました。
   この判決は、株式配当金は、株式の内容を構成する剰余金の配当を受ける権利が具体化したものであるから、相続開始後に発生した配当金も相続人に当然に分割されるものではなく、発行会社等に相続分に応じた請求をすることはできないと判断しました。

4 ご相談に対する回答
  以上に述べたとおり、令和7年の大阪地裁判決は、相続開始後に発生した株式配当請求権は、賃料とは異なり、各相続人にその相続分に応じて当然に分割されるものではないと判断し、株式配当金を投資信託の収益分配金と同様の取扱いをすべきと判断しましたので、今後の実務はこの方向で動いていくことが予想されます。
  従いまして、相談者が、遺産分割協議が成立する前に、証券会社に対して、自己の相続分に応じた配当金の支払いを請求しても、拒絶されるということになりそうです。

 
弁護士 藤 掛 伸 之 fujikake@lawyers.jp 




神戸湊川法律事務所
〒650-0015
兵庫県神戸市中央区
多聞通3-3-9 神戸楠公前ビル3階

TEL.078-341-3684

TOPへ戻る