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Q 今年の春から労働安全衛生法が改正されたと聞きました。私は一人親方として建設現場で働いているのですが、私たちのような個人事業者にも何か変化があるのでしょうか?
A 2025年5月に公布された労働安全衛生法等の改正法が、2026年4月から段階的に施行されています。今回の改正の最大の目玉が、まさにご質問にある「一人親方やフリーランスといった個人事業者等への保護の拡充」です。これまで「労働者」のみを対象としてきた安全衛生措置の対象が、契約形態を問わず作業現場で働くすべての人に広がるという、大きな転換点となる改正です。
○改正の背景
従来の労働安全衛生法は、雇用関係にある「労働者」を保護対象としていました。しかし、近年は働き方の多様化が進み、フリーランス・一人親方として働く人が約460万人にまで増加しています。とりわけ建設業の一人親方やフードデリバリー配達員などで深刻な労働災害が多発しており、対策の必要性が以前から指摘されていました。
加えて、2021年の建設アスベスト訴訟最高裁判決において、労働安全衛生法第22条が労働者だけでなく同じ場所で働く労働者以外の者も保護する趣旨であると判示されたことが、今回の改正の大きな契機となりました。これを受けて、契約形態にとらわれない安全衛生対策の必要性が法律上も明確化されたものです。
○改正の主なポイント
今回の改正は、次の5つの柱で構成されています。
①個人事業者等への安全衛生対策の拡充(2026年4月施行)
危険箇所への立入禁止や悪天候時の作業禁止、保護具の使用などについて、注文者・元請事業者は一人親方等にも周知・配慮する義務を負うことになりました。
②50人未満事業場でのストレスチェック義務化
従来は努力義務にとどまっていた小規模事業場についても、ストレスチェックの実施が義務化されます(公布後3年以内に施行)。
③化学物質による健康障害防止対策の強化
SDS(安全データシート)の通知義務違反に新たに罰則が設けられました。
④機械等による労働災害の防止の促進等(2026年1月施行)
ボイラー・クレーン等に関する検査体制が見直されました。
⑤高年齢労働者の労働災害防止(2026年4月施行)
事業者は、高齢者の身体機能に配慮した作業環境整備等を行う努力義務を負います。
○注文者・元請事業者として注意すべき点
特に建設業や製造業で外注先・下請に個人事業者等を活用している企業は、契約形態を問わず現場にいるすべての人を保護対象として捉える必要があります。具体的には、安全衛生に関する周知方法の整備(書面交付、口頭説明、現場掲示など)、措置内容の記録の作成・保存、請負契約書への安全衛生条項の追記等が求められます。指揮命令ができない一人親方等に対しては「指示」ではなく「周知」という形で情報を伝える点も実務上のポイントです。
また、2027年1月からは、個人事業者等の業務上災害の報告制度も始まる予定です。死亡または4日以上の休業を要する災害が発生した場合、注文者等は労働基準監督署に報告する義務を負うことになりますので、自社内での情報収集体制を整えておく必要があります。
■まとめ
今回の改正は、「労働者保護」から「働く人すべての保護」への大きな転換点です。個人事業者として働く方も、個人事業者等を活用する企業も、改正内容を正しく理解しておく必要があります。
社内ルールの整備や契約書の見直し、現場での周知体制の構築等についてお困りの場合は、弊所までお気軽にご相談ください。
