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賃料増額交渉の手順
2026-08-05
カテゴリ:Q&A
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賃料増額交渉の手順
Q
昨今の物価高の影響もあり、約10年前から貸しているマンションの賃料を上げたいと考えています。賃借人との間で、どのような手順で交渉していけばよいでしょうか。
A
建物の賃貸借契約における賃料増額請求は、借地借家法第32条1項に規定されています。これによると、物価の高騰や近傍同種の建物の賃料相場の変動などは、正当な増額理由(事情変更)となり得ます。また、契約書にも、賃料増額(減額)に関する条項を入れることもよくあります。
なお、「一定期間賃料を改定しない」旨の特約(不増額特約)が入っていることがあり、その特約がある場合、その期間中は原則として増額できませんので(借地借家法32条1項但書)、ご注意ください。
円滑かつ法的に適切な交渉を進めるための具体的な手順は以下の通りです。
1 任意交渉の開始
まずは賃借人に対して、丁寧なアプローチから開始します。いきなり強い態度で臨むと関係が悪化するため注意が必要です。
突然の請求ではなく、「昨今の物価高騰に伴う維持管理費の増大」や「周辺相場との乖離」を説明し、理解を求める丁寧な書面を送付し、「次回更新時より〇〇円への増額をお願いしたい」など、理由と改定案・改定時期を明示します。
また、賃借人からの回答や相談に応じるなど、対話による意思疎通を図ることも重要で、その中で、妥協点(例:一度に大幅値上げせず、段階的に数千円ずつ上げる等)を模索するという方法もあります。
2 内容証明郵便による「増額請求」の意思表示
任意交渉に応じない場合には、法的な手続きを意識して、内容証明郵便による通知を行います。これは、いつ、どのような意思表示をしたかという証拠を残すためです。
というのも、借地借家法第32条第1項は、「将来に向かって」建物の借賃の額の増減を請求することができると規定しており、賃料増額を求める意思表示が賃借人に到達して以降の賃料が対象となるので、賃料増額の意思表示が届いた時点を明確にする必要があるからです。
もちろん、当初の書面から、内容証明で行うことも考えられますが、郵便費用が多額となり、多数の物件の有している場合には、コストがかかりすぎますし、また、いきなり、内容証明で送られると、賃借人も身構えますので、任意の交渉に応じないと判断してからでよいと思います。
3 簡易裁判所での調停手続き
当事者間での話し合いがまとまらない場合、裁判所に法的な解決を委ねざるを得ません。
法律上、賃料の増減額請求については、裁判を起こす前に調停を申し立てなければならないとされていますので(民事調停法24条の2第1項、調停前置主義)、まずは、簡易裁判所に民事調停を申し立てます。
調停とは、簡易裁判所の調停委員会(裁判官と専門家などの調停委員)を介して、話し合いによる合意を目指す手続で、不動産鑑定士が作成した鑑定意見書を提出を求められることも多いです。
4 訴訟(地方裁判所・簡易裁判所)
調停はあくまで合意を目指す手続ですので、合意に達しなかった場合には、最終的に訴訟を提起し、裁判所に「相当な賃料額」を判断してもらうことになります。
通常は不動産鑑定評価(鑑定量)が行われ、その結果に基づき判決が言い渡されます(※鑑定費用が双方または原告にかかるため、費用対効果の慎重な判断が必要です)。
◎交渉にあたってのアドバイス
交渉や調停が長引いている間、賃借人は「自分が相当と認める額(従前の賃料など)」を支払えば債務不履行(未払い)にはなりません。
ただし、最終的に裁判等で「増額が相当」と確定した場合、賃借人は増額確定分について年10%の利息を付して差額を支払う義務を負います(借地借家法32条2項)。そのため、交渉や調停の段階で、「協議が不成立となった場合でも、確定時には年10%の利息が発生する」旨を説明しておくことで、協議に応じてもらいやすくなる場合があります。
また、確定した時点で、即時に支払わなければ履行遅滞となり、あまりに履行遅滞の状態が長引くと解除事由になり得ますので、その点も訴訟を回避させるための説得材料にはなり得ます。
以上の通り、貸主・借主の関係は継続するため、まずは「理由を明確にした丁寧な話し合い(任意交渉)」から進めることが最善です。
自力での交渉が難しい場合や、周辺相場の調査・通知書の作成、調停手続き等に不安がある場合は、弁護士へご相談・ご依頼いただくことをお勧めいたします。
弁護士 上田 貴 ueda@fujikake.lawyers-office.jp
昨今の物価高の影響もあり、約10年前から貸しているマンションの賃料を上げたいと考えています。賃借人との間で、どのような手順で交渉していけばよいでしょうか。
A
建物の賃貸借契約における賃料増額請求は、借地借家法第32条1項に規定されています。これによると、物価の高騰や近傍同種の建物の賃料相場の変動などは、正当な増額理由(事情変更)となり得ます。また、契約書にも、賃料増額(減額)に関する条項を入れることもよくあります。
なお、「一定期間賃料を改定しない」旨の特約(不増額特約)が入っていることがあり、その特約がある場合、その期間中は原則として増額できませんので(借地借家法32条1項但書)、ご注意ください。
円滑かつ法的に適切な交渉を進めるための具体的な手順は以下の通りです。
1 任意交渉の開始
まずは賃借人に対して、丁寧なアプローチから開始します。いきなり強い態度で臨むと関係が悪化するため注意が必要です。
突然の請求ではなく、「昨今の物価高騰に伴う維持管理費の増大」や「周辺相場との乖離」を説明し、理解を求める丁寧な書面を送付し、「次回更新時より〇〇円への増額をお願いしたい」など、理由と改定案・改定時期を明示します。
また、賃借人からの回答や相談に応じるなど、対話による意思疎通を図ることも重要で、その中で、妥協点(例:一度に大幅値上げせず、段階的に数千円ずつ上げる等)を模索するという方法もあります。
2 内容証明郵便による「増額請求」の意思表示
任意交渉に応じない場合には、法的な手続きを意識して、内容証明郵便による通知を行います。これは、いつ、どのような意思表示をしたかという証拠を残すためです。
というのも、借地借家法第32条第1項は、「将来に向かって」建物の借賃の額の増減を請求することができると規定しており、賃料増額を求める意思表示が賃借人に到達して以降の賃料が対象となるので、賃料増額の意思表示が届いた時点を明確にする必要があるからです。
もちろん、当初の書面から、内容証明で行うことも考えられますが、郵便費用が多額となり、多数の物件の有している場合には、コストがかかりすぎますし、また、いきなり、内容証明で送られると、賃借人も身構えますので、任意の交渉に応じないと判断してからでよいと思います。
3 簡易裁判所での調停手続き
当事者間での話し合いがまとまらない場合、裁判所に法的な解決を委ねざるを得ません。
法律上、賃料の増減額請求については、裁判を起こす前に調停を申し立てなければならないとされていますので(民事調停法24条の2第1項、調停前置主義)、まずは、簡易裁判所に民事調停を申し立てます。
調停とは、簡易裁判所の調停委員会(裁判官と専門家などの調停委員)を介して、話し合いによる合意を目指す手続で、不動産鑑定士が作成した鑑定意見書を提出を求められることも多いです。
4 訴訟(地方裁判所・簡易裁判所)
調停はあくまで合意を目指す手続ですので、合意に達しなかった場合には、最終的に訴訟を提起し、裁判所に「相当な賃料額」を判断してもらうことになります。
通常は不動産鑑定評価(鑑定量)が行われ、その結果に基づき判決が言い渡されます(※鑑定費用が双方または原告にかかるため、費用対効果の慎重な判断が必要です)。
◎交渉にあたってのアドバイス
交渉や調停が長引いている間、賃借人は「自分が相当と認める額(従前の賃料など)」を支払えば債務不履行(未払い)にはなりません。
ただし、最終的に裁判等で「増額が相当」と確定した場合、賃借人は増額確定分について年10%の利息を付して差額を支払う義務を負います(借地借家法32条2項)。そのため、交渉や調停の段階で、「協議が不成立となった場合でも、確定時には年10%の利息が発生する」旨を説明しておくことで、協議に応じてもらいやすくなる場合があります。
また、確定した時点で、即時に支払わなければ履行遅滞となり、あまりに履行遅滞の状態が長引くと解除事由になり得ますので、その点も訴訟を回避させるための説得材料にはなり得ます。
以上の通り、貸主・借主の関係は継続するため、まずは「理由を明確にした丁寧な話し合い(任意交渉)」から進めることが最善です。
自力での交渉が難しい場合や、周辺相場の調査・通知書の作成、調停手続き等に不安がある場合は、弁護士へご相談・ご依頼いただくことをお勧めいたします。
弁護士 上田 貴 ueda@fujikake.lawyers-office.jp
