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夫婦別姓のメリット・デメリット
2021-04-07
Q.最近、新聞紙上等で選択的夫婦別姓制度の導入の是非に関する議論がさかんになっていますが、いったい何が問題なのでしょうか。



A.現行の日本の法制では、夫婦はいずれか一方の姓を夫婦の姓とすることが義務付けられています。最近では、結婚式を挙げても、そのまま結婚前の姓を名乗って社会生活を継続している夫婦も多いですが、夫婦別姓では、夫婦として戸籍の届出が受付けられないので、法律婚ではなく事実婚を継続することになって、相続の場合などに法的な保護が十分ではありません。

夫婦同姓制度は、いずれか一方の姓にすればよいので、夫の姓でも妻の姓でもよいのですが、現実には圧倒的多数(90%以上)の夫婦が、夫の姓を夫婦の姓と定めています。世間的には、夫の姓を名乗るケースを「○○家に嫁ぐ」とか、逆に妻の姓を名乗るケースは「婿養子に入る」などということがありますが、どちらの姓を名乗るとしても、それは夫婦としての新しい姓を決めることであり、一方が他方の家に入るということを意味するものではありません。
それにもかかわらず、現実には圧倒的多数の夫婦が夫の姓を夫婦の姓としているということは、妻が夫の家に入るという戦前の家制度の名残りともいえ、戦後進化した平等原則の考え方からは問題があります。

しかしながら、夫婦とその子が皆同じ姓であるということは、家族の一体感を高め、また第三者から見て家族であることがわかりやすいというメリットがあります。反面、夫の姓を夫婦の姓とする傾向が強い我国においては、男女間に不平等が生じることや、女性の姓が変更になることが多いことから女性の社会進出にとって妨げになるといった弊害が指摘されています。
また、諸外国の例をみても、夫婦別姓が主流であり、夫婦同姓を義務付ける国は先進国では我国だけです。そのことから、かなり以前から夫婦は結婚してもそのままの姓でよいとする夫婦別姓制度の導入を求める意見が強くなっていました。

しかし、夫婦別姓制度には、日本の長年の伝統になじみにくいとか、家族関係がわかりにくくなるとか、子どもの姓をどうするかなどの問題もあり、実現には至っていません。

以上のとおり、夫婦同姓制度にも夫婦別姓制度にもそれぞれメリットとデメリットがあることから、現在、我国で導入が検討されているのは、夫婦が婚姻時に同姓とするか別姓とするかを選べる選択的夫婦別姓という制度です。

この制度によれば、それぞれの夫婦が両制度のメリット・デメリットを考慮して自分たちに適合する制度を選択できることになり、各制度のメリットを生かし、デメリットを補うことが可能となります。

ただし、選択的夫婦別姓制度が導入されても、夫婦が別姓制度を選択した場合には、子どもの姓をどうするかという問題は残りますし、日本の伝統的な家族のあり方が損われるといった反対意見も強く、この制度の実現にはまだ紆余曲折がありそうです。

神戸湊川法律事務所 代表弁護士 藤掛 伸之 fujikake@lawyers.jp
神戸湊川法律事務所
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