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「無断駐車罰金5万円」貼り紙の効力
2021-02-05
Q.乗用車で出かけたのですが、目的地周辺に駐車場がなく、時間もなかったので、やむを得ず、たまたま見つけた空地にほんの少しだけ駐車させてもらいました。

用を済ませて車に乗込み発車しようとしたところ、見知らぬ男が車の前に立ちはだかって、空地の隅に立てかけられた「無断駐車お断り。見つけた時は罰金5万円」という立看板を指差して私に5万円の支払いを要求してきました。

私は、駐車する際には急いでいてその看板に気付かず、駐車させてもらった時間はわずか30分程度ですが、それでも5万円を支払う義務があるのでしょうか。



A.町中の空地などで、しばしば「無断駐車お断り。見つけた時は罰金●●万円。」などと記載された貼紙や立看板を見ることがあります。金額は、1万円から5万円程度が多いようですが、中には10万円以上の高い金額が記載されている場合もあります。高い金額が記載された貼り紙は、あまり気持ちのよいものではありませんし、「罰金」という言葉も刺激的ですね。

こういう貼紙を見たら、誰しもその空地に駐車しようという気持ちにはならないでしょうから、迷惑駐車を防止するためにはこういった貼紙の効果は十分にあると言えるでしょう。

では、貼紙に違反して駐車した場合、本当に罰金を支払う法的義務が発生するのでしょうか。

私人と私人の間で支払義務が発生するケースは法律で限定されており、その大半は契約であり、それ以外では交通事故のような不法行為などがあります。しかし、「罰金」というのは、国や自治体が法律や条例によって定めることによって発生するものであり、私人が私人に対して罰金を課することはできません。

従って、ご質問のケースでは「罰金」5万円を支払う法的義務はありません。

では、全く支払義務がないかというとそうでもありません。

先程述べたように、不法行為があれば私人間でも支払義務が発生します。迷惑駐車は他人の土地の使用収益を妨げる不法行為に該当しますので、賃料相当損害金という損害賠償支払義務が発生することが考えられます。ただし、その金額は、せいぜい近隣相場の駐車料程度であり、ご質問のケースのように30分程度の迷惑駐車であれば、所在地にもよりますが、せいぜい200円から300円程度というところでしょうか。もっとも、1年以上も放置したということになれば、何十万円もの損害金の支払義務が発生することもあり得ます。

それと、もう一つ支払義務が発生するケースとして、契約の成立により、駐車料支払義務が発生するケースが考えられます。例えば、空地の貼り紙に、「駐車1回3000円」とあった場合には、空地の所有者が駐車1回当りの駐車場利用契約の申込みをしていると解釈することができ、その貼り紙を見て駐車した場合には、その申込みを承諾したことになり、駐車場利用契約の成立により、1回当り3000円の駐車料の支払義務が発生します。
もっとも、そのような効果が認められるのは、記載されている料金が相場の範囲内である場合に限られ、桁違いに大きな金額を記載した場合には暴利行為として無効となるでしょう。

ご質問のケースでは、立看板には「無断駐車お断り。見つけた時は罰金5万円」と記載されていることから、空地所有者としては、「駐車するな」という意思が読取れ、有料での利用を申込んでいるとは解釈できません。また、30分で5万円を請求するのは、暴利行為にも該当します。従いまして、罰金5万円を支払う必要はありませんし、契約としても5万円を支払う必要はありません。軽微な不法行為にはなり得ますので、1000円程度の和解金を支払って円満に話合いで解決するのが現実的なケースと言えるでしょうか。

神戸湊川法律事務所 代表弁護士 藤掛 伸之 fujikake@lawyers.jp
神戸湊川法律事務所
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