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任意後見より家族信託を
2020-05-08
Q.私は75歳で、1年前に夫に先立たれて1人暮しをしています。まだ元気で頭もしっかりしているのですが、将来の健康状態を考えると不安があり、今のうちに、私が所有している収益物件のアパートの建替えや売却などの管理・処分を1人娘に委ねて、その収益を私の老後の資金として確保してもらい、私の死後は長女にそのまますべてを相続させたいと考えています。
何かよい方法はあるでしょうか。



A.老後の財産管理を家族に委ねるための手段としては、従来は任意後見契約を利用することが多かったと思います。しかし、最近では、任意の契約によって特定の家族に財産管理を委ねる家族信託契約を利用される方が増えてきています。

任意後見も家族信託も財産管理のための制度としては共通です。
しかし、任意後見は本人が判断能力を欠くようになってから裁判所の後見開始の審判がなされて初めて効力が発生するため、後見開始までの間に判断能力が不十分な本人が財産を管理する期間が生じ、十分な資産運用ができない場合があります。

これに対して、家族信託は、本人が元気なうちに、信頼できる特定の家族に特定の財産を形式的に譲渡することによって、託された家族は信託の目的の範囲内であれば、信託財産の管理だけでななく、自由に処分や運用をすることができるというメリットがあります。

手続も、信託の目的などが記載された契約書を交わして信託財産の権利を形式的に受託者に移転する(不動産であれば移転登記)だけで簡単であり、家族が受託者の場合には、費用もほとんどかかりません。これに対して、任意後見は、後見開始決定を得るために鑑定書の作成が必要になる他、決定に伴って選任される任意後見監督人に対する報酬が発生するなど、コストも無視できません。

また、任意後見は、財産の維持・管理を目的とする制度のため、後見人の権限には限界があり、ご相談のように本人の収益物件を建替えたり、売却してお金に換えたりすることも困難です。

これに対して、家族信託の場合には、受託者は信託の目的の範囲内であれば、信託不動産を建替えたり、売却して本人の老後の資金を確保するということも可能になります。

相談者の場合には、収益物件のアパートを所有していて、それを建替えや売却をすることにより、老後の資金を確保したいというご要望ですから、任意後見よりも家族信託の方が適しているということになります。

もっとも、家族信託で受託者に託すことができるのは財産の管理や処分に関することのみであり、後見人のように医療や介護などの身上監護に関する法律行為を託すことはできません。
従いまして、相談者が将来的に要介護状態になった場合には、あるいはそのような場合に備えて、家族信託に加えて、任意後見や法定後見を併用するという方法も考えられます

神戸湊川法律事務所 代表弁護士 藤掛 伸之 fujikake@lawyers.jp
神戸湊川法律事務所
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