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取引上の債権の消滅時効期間が統一されます
2019-11-26
Q.民法改正により、売掛金等の債権の消滅時効期間が変更になると聞きましたが、この変更は、商売上の売掛金の管理に影響してくると思われるので、詳しく教えて下さい。



A.現行の民法では、原則として10年という消滅時効期間に加えて、職業別に異なる短期消滅時効期間が定められており、売掛金等の債権を時効消滅させないように管理するのが大変でした。

例えば、病院での治療費や請負工事代金は3年、商品の売買代金は2年、月給や飲食代金は1年で時効消滅するとされていました。このように債権の種類によって消滅時効期間が異なるため、時効期間を間違えて貴重な売掛金を時効のために失うという事態が多く発生しました。

令和2年4月1日から施行される改正民法では、このような複雑な職業別の消滅時効期間の定めを廃止し、取引上の債権の時効期間について、権利を行使できる時(客観的起算点)から10年、または権利を行使できることを知った時(主観的起算点)から5年という消滅時効期間に統一されることになりました。この改正の結果、取引上の債権については、通常、支払期限の存在等により、客観的起算点と主観的起算点が一致するため、売掛金等の時効期間は原則として5年と覚えておけば足りることになり、債権の管理がしやすくなります。

また、改正民法では、債権債務の当事者間において支払方法等について協議を行う旨の合意が書面(メール等の電子データ方式でもよい)でなされた場合には、それが時効完成猶予事由になることが新たに定められました。これにより、紛争解決に向けて協議中の当事者は、本来の時効が完成すべき時期が迫ってきても、この合意をすることにより、あわてて訴訟提起等することなく協議を継続することができることになります。
猶予の期間は最大で1年間ですが、督促状の発送などの「催告」とは異なり、通算5年を超えない範囲内で再度の合意を繰り返すことによって、猶予期間を伸長できることが定められました。

改正民法はすでに成立していますが、施行は令和2年4月1日からと定められています。
それまでに発生した債権については、施行日以降も旧法の職業別の短期消滅時効期間が適用されるので注意が必要です。

また、消滅時効の中断や完成猶予については、その事由の発生日が施行日後であれば新法が適用されるので、施行日前に発生した債権であることにより旧法の短期時効消滅期間が適用される債権について、施行日後の合意により、新法に基づいて、その時効の完成を猶予することができるということになります。

神戸湊川法律事務所 代表弁護士 藤掛 伸之 fujikake@lawyers.jp
神戸湊川法律事務所
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