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フリーランスの保護が強化されます!
2024-08-05
カテゴリ:Q&A
フリーランスの保護が強化されます!

私は、フリーランスでシステムエンジニアをしていますが、注文者から、一方的に契約内容を変更されたりして困っています。どうにかならないでしょうか。


1 フリーランス保護新法の成立

フリーランスとは、特定の企業や組織などに所属せず、企業などから業務の委託を受けて働く事業者のことをいいます。
フリーランスには、労働基準法などの労働法規が適用されず、「最低賃金」「労働時間」「休日」「有給休暇」「労働災害での補償」などの規定の対象外となるため、取引上弱い立場に置かれています。そのため、業務を委託する企業から一方的に契約内容を変更されたり、報酬の支払いが遅れたりする等トラブルに巻き込まれがちです。
他方で、フリーランス人口は年々増加しており、政府も、フリーランスも含めて柔軟な労働移動の実現や、自己実現のできる働き方を求めています。

このような社会の動きに合わせて、フリーランスが不当な不利益を受けることがなく、安定的に働くことができる環境を整えることが求められ、令和5年4月28日、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」(フリーランス・事業者間取引適正化等法案。いわゆる「フリーランス保護新法」)が成立し、令和6年11月1日から施行されます。

2 フリーランス保護新法の内容

フリーランス保護新法は、委託事業者に対し、主に以下のことを遵守するよう求めております。

ア    書面等での契約内容の明示
委託事業者は、フリーランスに対し業務を委託した場合、フリーランスの給付の内容、報酬の額等を明示しなければなりません(フリーランス保護新法3条1項)。
具体的には
・給付の内容
・報酬の額
・支払期日
・公正取引委員会規則が定めるその他の事項
を、書面又は電磁的方法で明示する必要があります。

イ 報酬の60日以内の支払い
フリーランス保護新法では、フリーランスが報酬の支払遅延を受けないように、報酬の支払期日につき、遅くともフリーランスから給付を受けた日から、60日を経過する日までに報酬を支払わなければならないと定められています(フリーランス保護新法4条)。

ウ 委託事業者が遵守すべき禁止事項
フリーランス保護新法では、長期間の業務委託がなされる場合に、フリーランスが不利益を受けないように、委託事業者が遵守すべき禁止事項を定めています(フリーランス保護新法5条1項・2項)。
・フリーランスの責めに帰すべき事由なく給付の受領を拒絶すること
・フリーランスの責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること
・フリーランスの責めに帰すべき事由なく返品を行うこと
・通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
・正当な理由がなく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
・自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
・フリーランスの責めに帰すべき事由なく給付内容を変更させ、又はやり直させること

エ 募集情報の的確な表示
委託事業者が、新聞や雑誌その他の刊行物に掲載する広告等において、フリーランスを募集する場合には、的確な表示を行わなければなりません(フリーランス保護新法12条1項)。具体的には、広告などにより情報を提供するときには、当該情報について虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、また情報を正確かつ最新の内容に保たなければなりません。

オ ハラスメント対策
委託事業者が、フリーランスに対して長期間にわたって継続的な業務委託を行う場合には、妊娠・出産・育児・介護と両立しつつ業務に従事することができるよう、必要な配慮をしなければなりません(フリーランス保護新法13条1項)。長期間の業務委託ではない場合にも、同様の配慮をする努力義務を負います(フリーランス保護新法13条2項)。
また、委託事業者は、フリーランスに対して、その言動によりセクハラ、マタハラ、パワハラ等の状況に至ることがないよう、フリーランスからの相談に応じ、適切に対応するために必要な措置を講じる義務を負っています(フリーランス保護新法14条1項)。
労働契約締結にあたって労働条件が明示されなければ、労働者が自分の労働条件を知ることができず、使用者が恣意的に労働条件を決定するおそれがあります。

カ 解除等の予告
フリーランスとの契約解消では、労働契約における解雇予告や解雇理由証明書の請求に準じた規律が設けられています。
すなわち、長期間にわたる継続的な業務委託の場合、委託事業者は、フリーランスとの契約を解除しようとする場合または契約不更新とする場合には、原則として少なくとも30日前までにその予告をしなければなりません(フリーランス保護新法16条1項)。また、委託事業者は、フリーランスから契約解除の理由の開示を求められた場合には、遅滞なくこれを開示しなければなりません(フリーランス保護新法16条2項)

以上のように、フリーランス保護新法の施行により、フリーランスの保護は強化されますので、上記相談のような事態は少なくなると思います。仮に、委託事業者が、フリーランス保護新法に違反した場合には、罰金刑が定められています。

弁護士 上田 貴 ueda@fujikake.lawyers-office.jp

神戸湊川法律事務所
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